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2008.05.07 初心を忘れる
大学院で修士論文の作成をしながらも、私の心はいまひとつ晴れなかった。

そもそもどうして大学院に進み学問などをやろうと思ったのだろう、と考えていたからだった。

大学時代に目指していた司法試験は、全く受験する気持ちもなく、その環境にもない。

しかしだからとて学者として身を立てることが自分の人生なのだろうか。

私は学問や知識は人を幸せにするものでなければならないし、そうであるべきだとも思っていた。
というよりも、知識は人を自由にし幸せにするものだという確信があった。

しかし、今私がやっている研究や勉強は本当にそのような世界に通じているだろうか。

大学という狭い世界の中で世間を知らず、ひたすら高慢になってはいかないだろうか。

私の初心は「知識を人の幸せに役立てること」「人間を幸せにするような本物の知性を身につけること」だったはずだ。

しかしこの頃の私は初心を忘れて有名な大学教授に弟子入りし願わくば自分も有名になりたいだとか、難しい理屈を捏ね回して他人よりも少し高度な人間であることを示したいとか、そんな気持ちが存在していた。

今自分が勉強している動機が決して天に恥じることのない純粋なものではなかったのだ。

大学院で出会った人々は、善良な人も多くて立派な人も多かったが、世間の荒波を知らないがゆえに狭い世界観の中で生きている「恵まれた人」がほとんどだ。

私が目指した世界はそのようなものではなかったはずだった。

初心を貫徹することの難しさをこの頃の私は実感していた。
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